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炭水化物過剰の顛末

うどんの写真 薬味の効いたぶっかけうどん!美味です!

 PFCバランスという言葉があります。摂取した栄養素の内訳で、たんぱく質(Protein)・脂肪(Fat)・炭水化物(Carbohydrate)のエネルギー比率を言います。終戦直後の1946年には総摂取カロリーの約80%が炭水化物でした。現在でも約60%がそれです。残りは、脂肪が約25%で蛋白質が約15%です。歴史的にみても、気候の温暖化が進んだ結果として始まった縄文の植物採食と、その後の寒冷化に対応した弥生の農耕生活。炭水化物は人類の生活を支えてきた、常温で貯蔵可能なカロリー供給源であり、今後もその重要性が変わることはないでしょう。

 具体的な数字を見ますと、日本人の1日当たり摂取カロリー数は終戦直後の1946年の1903kcalから1975年には2226kcalまで増加。その後2004年には1902kcalまで減少。2011年には1785kcalになっています。摂取カロリーの減少理由としては、ライフスタイルの変化に加えて、高齢化の影響等も考えられます。自主流通米の増加と言った統計に乗らない要因なども関係していますが、減少傾向に間違いはないようです。

 いずれにせよ、摂取カロリーが少なくてもそれ以上に消費カロリーが少なければ食べ過ぎ状態となります。運動不足が肥満の原因になることは万人の知るところです。肥満に関連してよく耳にする言葉に中性脂肪がありますが、今回は中性脂肪に関連したお話です。

血液検査結果シート

 さて、年に一度、健康診断を受けられる方は多いと思いますが、その際によくチェックが入っているのが中性脂肪。日本での一般的な基準値は50~149㎎/dlです。但し、中性脂肪は食事で簡単に上昇しますので、測定時には12時間の絶食が前提です。食後の測定では傾向は観られても、確定的なものではありません。中性脂肪の高いとなぜ悪いかと言いますと、1000㎎/dl以上では急性膵炎の発症が危惧されます。但し、中性脂肪が高いだけでは動脈硬化にはなりません。

 中性脂肪のほとんどはグリセロール1分子にオレイン酸、パルミチン酸やリノール酸などの脂肪酸が3分子付いたものです。どのようにできるかと申しますと、まず食事により取り込まれた脂肪は消化液や消化酵素により分解され、小腸から吸収されます。その後に中性脂肪に再合成され、これがカイロミクロンというリポタンパク質により肝臓、脂肪組織や骨格筋組織など、全身に運ばれます。

 また、肝臓を中心として炭水化物が分解されてできたブドウ糖からの脂肪酸合成も行われ、中性脂肪増加の原因となります。他方、たんぱく質は体組織の原料として使われやすいため、両者ほどには影響はありません。中性脂肪は体の各組織で使われますが、使い残されたものは皮下脂肪や内臓脂肪として蓄積されて行きます。つまり、中性脂肪が増える食事内容として、高脂肪食に加えて、砂糖などの単純糖質を含む炭水化物(糖質)の摂取過多が挙げられます。

 香川県は皆様もご存じの通り“うどん県”です。「うどんは別腹」と呼号し、一度に何玉も平らげる人も多く、運動不足と相まって中性脂肪値を押し上げています。中性脂肪が高い患者さんに伺うと、十中八九「うどんや甘いものが大好きだ」と仰います。そして、大方の人はそれらを減らすことで数値が正常化しています。

 同じく、定期検診でよくチェックが入るのがγ-GTP。γ-GTPというと真っ先に挙げられるのが飲酒過多ですが、アルコールの他、薬の副作用、脂肪肝、胆道系の疾患などで上昇します。体質や体調によるものを除けば、血中のγ-GTPが上昇するのは膵臓や肝臓に問題がある場合です。この内、GPT(ALT)の上昇を伴うものでは脂肪肝や慢性肝炎が疑われます。

 脂肪肝を指摘された患者さんにも緩やかな糖質制限(ラーメンやうどんなどの麺類やご飯の1回あたり摂取量を減らしたり、1日1回は炭水化物を摂らないといった程度の制限)を勧めますが、この場合も実践者では数値が速やかに改善しています。GPT(ALT)も一緒に低下しています。糖質の代謝が人によっては肝臓に大きな負荷をかけていることも分かります。

 話が肝機能になったついでに申しますと、肝細胞癌の多くは慢性肝炎・肝硬変から発生します。1995年以降、毎年3万人強がなくなられている肝細胞がんの内、C型やB型のウイルス性肝炎が中心で、約85%を占めますが、残りはアルコール性肝障害や非アルコール性脂肪性肝炎(NASH:ナッシュ)からの発生がほとんどです。とくに肥満・高血圧で2型糖尿病を有する患者さんにおいてリスクが高いようです。NASHの発生機序は未だはっきりとは判ってはいませんが、脂肪肝をベースとして、さらに鉄の過剰・インスリン抵抗性・歯周病菌などの細菌感染等が考えられています。B型やC型の肝炎による肝細胞がんは新規感染の予防と薬物療法の進歩により減少して来るでしょうが、NASH由来のそれは増え続ける恐れがあります。

 ちなみに、最近よく話題に上るのが糖質制限食ですが、多くの糖尿病患者で糖質制限を行って好成績を上げておられることは「ドクター江部の糖尿病徒然日記」http://koujiebe.blog95.fc2.comでつぶさに紹介されていますので、ご存知の方も少なからずおられると思います。極端な糖質制限に疑問を呈する日本糖尿病学会も、緩やかな糖質制限食(糖質130g/日程度)を認めるようになったようです。私共の薬局を利用される患者さんでも1日3食の内、1食だけ糖質(炭水化物)を摂らないようにするだけで、糖尿病の指標(HbA1c)がみるみる改善しています。

 以上、取り留めのない話になってしまいましたが、人類にとって欠かすことのできない炭水化物が、摂りすぎることでいろいろな障害を起こしうることが分かって来ました。ラーメンやうどんは私も大好きですし、最近は香川県においてさえもラーメン店が増えつつあります。いろいろな味を楽しむことは日常生活上の喜びの一つでもあります。しかしながら、くれぐれも単純糖質を含む炭水化物の過剰摂取には気を付けられ、健康で快適な生活を送られるよう祈念いたします。

ラーメンの写真 豚骨醤油味の匠ラーメンも大好きです!